

日本複合材の複合材料パースペクティブと
東アジアを中心としたCFRP/CFRTPソリューション
国際サプライチェーンにおける、日本複合材の立ち位置
工業デザイナー、コンポジット・デザイナーという立場は、まだ見ぬ未知の商品を形にしていくことが仕事です。スタイリストやパタンナーと違い、クライアントの要求に合わせ、それはどのようなモノかを想像し、その要件を満たす部品の構成とその部品の生産技術、材料選択ができないと仕事になりません。具体的に言えば、商品企画、全体のデザイン構成、各部品の製法、構造設計、品質管理、生産工場の情報管理、最新の複合材料情報、その中間材料調達、マトリックス樹脂に関する知識、強化材、炭素繊維市場に関する最新情報を常にアップデートしておく必要があります。そうでなければ、OEMのデザイナーに先端複合材料のアドバイスをすることは不可能です。逆に、それができれば、量産OEMの商品企画の方向性がわかり、そのデザイナー、R&Dチームの考えが理解でき、サプライヤーを検索し、紹介することが可能になります。
弊社は、クライアントが必要とする最新の先端複合材料の技術情報、最新トレンドを提供し、そのデザインアイデアを提供しています。これによりOEMの信頼を得て、現在のポジションにいます。私どもは、クライアントはもちろん、サプライヤーに情報提供をしています。逆にサプライヤーがクライアントになる場合もよくあります。
まずは、これまで上流において、PAN系炭素繊維の世界標準を日本ブランドが占め、高い収益率を誇っていました。少し前までは、日本国内のアドバンスコンポジットの業界は、ほぼPAN系三社の系列企業が閉鎖的なサプライチェーンで高収益を享受していましたが、ユーザー企業はその囲い込みによる高価な材料は敬遠し、海外調達を模索しました。そこで、自転車、スポーツ用品ブランドOEMは台湾、そして台湾の技術的影響下にある中国にその製造を求めましたが、10年ぐらい前までは、それでも炭素繊維は日本メーカーが選ばれ、輸出が伸びていました。現在でも「東レのCFでないとダメだ」というOEMはいます。一方、日本の自動車会社は「10ドル/Kg 以下でないと、自動車には使えない」と言って、これまで一部の高級スポーツカーにしか採用をしてこなかったのですが、COVID19パンデミック以降に中国製の炭素繊維が世界市場に流入し始め、過剰な生産キャパシティを背景に特に標準グレードの炭素繊維の価格が急激に安くなってきました。中国だけでなく、前前政権の時に韓国では大きな投資を行ったHyosungでは、韓国国内だけではなく、中国国内とベトナム、すなわち大規模な生産が行われている需要地に工場を新設しています。これらの情報が自動車会社の商品企画に入り、新しい世代のバッテリーEVや水素自動車の部品へと組み込む動きが出始めています。
炭素繊維の価格が、OEMにとって適正数値に落ち着いてきても、CFRPは人間の手で製造される部分が多く、工場ワーカーの確保が必要であり、さらに東アジアでの各国の少子化の影響もあり、賃金の増加傾向は止まらず人件費は高騰しており、その生産工場は南下しています。日本の自動車OEMは、これまでの歴史の中において東南アジアで自動車、オートバイの生産を行ってきたので、東南アジアでのコンポジット部品の調達には抵抗がなく、むしろ日本国内での囲い込みから逃れ、新しいカーボンコンポジットを研究する時代がきているようです。
(質問に対する答え)SAMPE JAPANに関すること
SAMPE JAPANは、アメリカ合衆国の航空機材料と成形プロセスを研究する団体であるSAMPE(Society for the Advancement of Material and Process Engineering)の日本支部であり、日本のPAN系炭素繊維メーカーは1970年代からその材料研究に重要な地位を持ってきました。日本のPAN系3メーカーはSAMPE Global においても重要な位置にあり、会長職やFellowを多く輩出してきました。また、航空宇宙産業に従事する日本の基幹産業の材料、製造プロセス開発など、重工業、化学工業を含めその技術を切磋琢磨している団体と言えるでしょう。定期的な技術情報交換会があり、シンポジウムが年に2回、東京と京都で行われ、SAMPE JAPAN展示会は日刊工業新聞社との共催で毎年行われています。SAMPE JAPANにおいては、複合材料セクターとしてひとつの塊りと考えるのは間違いです。カーボンファイバーコンポジットは、明らかに航空機産業の発展に寄与してきましたが、特に熱可塑性複合材料においては、SAMPE JAPAN発足当初から炭素繊維入り射出成形技術や、インサート成形、インモールド成形、プレス射出ハイブリッド成形等、歴史的な航空機部品製造とは異なるアプローチの軽量構造材の量産成形技術が研究されてきました。より高性能なコンポジット、量産向けの安価を目指したもの、地球環境を守る研究など、現在は多岐にわたる最新技術が、技術情報交換会で切磋琢磨されています。それは世界に影響を与える研究テーマもこれまでに多く発表されてきました。
(質問に対する答え)Hydrogen Strategyに関すること
水素セクターに関するご質問ですが、地球環境の保全だとか、CO2排出量の論議の前に石油資源の乏しい日本国が水素活用技術を国家の基幹産業に育成しようとする背景があります。なので、川崎重工やトヨタ自動車など、国の方針をよく理解している会社は「水素社会を実現しよう」といろんな先行投資を行っています。日本の近海にはメタンハイドレートが海洋資源として多くあり、メタンハイドレートから水素を取り出し、同時に高価値なカーボンナノチューブ(炭素素材)を回収する技術が研究されています。この方法により、CO₂を排出せずにクリーンな水素エネルギーを製造できるため、次世代の脱炭素技術として期待されています。複合材料が水素社会に貢献できる要素は、単に高圧容器を構成するFWによるCFRP成形だけではありません。水素は、その材質の特性から金属内部に水素が侵入し、金属材料を脆くさせます。水素脆性と言われるもので、金属パイプによる配管では使用しているうちに内側から腐食が進み危険です。そのため浸食されないポリマー複合材料により、水素をうまくコントロールする研究が始まっています。水素脆性は高張力鋼管ほど脆くなりやすいので、ガスバリア性の高いCFRTPに期待されています。CFUDテープは、FWにより、高圧力貯蔵タンクが製造できます。CFRTP/CFUDテープ/射出ハイブリッド成形が金属材料に入れ替わる可能性が高いと思います。
2026年6月22日 JEC FORUM South East Asia 2026 Presentation Text


