CFRP+金属メッキ技術

金属代替としてCFRPの利用を検討するという例は、これまでも多くのCFRPの製品開発の動機になっています。CFRPで金属部品の電気特性を含めた代替が可能なのか。CFRP、炭素繊維そのものに直接金属メッキすることで、高強度・軽量化だけでなく、表面摺動性の向上や電気的特性の工場を目指しています。

CFRPウイングレットにメッキ加工を施したもの
炭素繊維に銅メッキを施したもの

現代のレーシング・マシーンはCAD設計され、多くの要素を入力してデーター解析され、それによる最適解を導いているのはご存知の通り。なので、風の流れがどうなっていて、抵抗がどこで発生するかの予測ができ、それを風洞実験で検証してから、実戦導入されます。

モーターサイクル・レーシングでは、2010年頃からウイングレットの導入が認められ、その後、市販車にも先端の空力技術がフィードバックされた車両が、過去にはあり得なかった形で進化しています。

3D-CAD/CAMで風の流れを設計したものを実戦導入しても、計算と合わない部分が出てきます。実走して車両にセンサーを取り付けて走らせると、想定以上の抵抗、設計通りではない何かの力が働いている場合があります。その原因は静電気だといわれます。

電子制御される以前の自動車、オートバイは、キャブレターで燃料供給しスパークプラグを着火させるシンプルな電気構造でしたが、現代は燃調も点火も灯火類も含め、すべて電子制御されています。市販車をベースとするレーサーで競う耐久レースでも、これまでレース途中に電気系トラブルに見舞われ、車両が止まってしまうという悲劇が何度かありました。ECUの誤作動を引き起こしたもの。それも車両に帯電した「静電気」が原因ではないかと疑われています。

塚田理研は長野県にあるメッキ加工メーカーです。あらゆる部品に金属メッキ加工を施す高い技術を保有し、国内の自動車メーカーをはじめ、家電や家具、工具メーカーなど幅広い業界にメッキ加工技術を提供しています。特殊な用途も含め新しいニーズの研究開発に取り組む会社です。

弊社との接点は2023年にグッドデザイン賞を受賞したKOBATRON、リサイクル・カーボンファイバーの製造元、富士加飾様のご紹介でした。「オートバイ向けのCFRP部品へのメッキ開発をしている会社がある」と聞き、塚田理研と弊社の付き合いが始まりました。

ウイングレットの金属メッキ加工は、外観の目新しさだけを追求したものではありません。


今回の開発を促す技術背景

塚田理研の樹脂部品への金属メッキ技術は、「LOVE CHROME」という美容業界向けの櫛があります。以前から樹脂成型品の軽いヘアブラシ・櫛はありますが、樹脂成型品の櫛で髪の毛をとかすと静電気が発生してしまいます。LOVE CRHOMEは表層に金属層があることで、静電気の発生を抑え櫛のとおりが滑らかで、理美容業界で大きな話題になっています。その「不思議な櫛」は、海外セレブにも愛され、日本の芸能界の愛用者も個人的にSNSで配信しています。

今回のCFRPウイングレットのメッキもこの技術の応用です。高速で風を切り裂くウイングレットは、走行中にCFRP部品の表面に静電気を帯電させてしまいます。表層の静電気は、空気の流れを乱して、CFRP空力部品の設計どおりに風が剥離せず、抵抗になってしまう。それを抑制するために表層にメッキ加工し除電します。

レーシング・マシーンから発生する「静電気」は、ウイングレットなど風が当たる外装部品だけではなく、電子デバイスに「帯電して電気的なバランスが崩れた状態=静電気」が発生します。時にこの静電気がECUに悪さをし、突如走行不能になるなど、大きな問題になるという場合もあります。その物質が動くことにより起こる静電気、また電子機器から発せられる電磁波からコンピュータユニットを保護するのに、金属メッキは大いに威力を発揮します。

CFRP成形品は、軽量で金属材料に代替する強度のある構造材料です。日本複合材は、試作開発から量産計画を含めた軽量な構造材料であるCFRP部品の供給を行っています。
CFRPと金属メッキ技術のコンビネーションにより、薄層でも通電する金属を纏ったCFRP部品は、静電気の除電という機能と外観的な美観を提供します。少量の試作からでも対応が可能です。


塚田理研CFRPサイト https://www.tukada-riken.co.jp/column/cfrp-plating/

ライディングスポーツ誌に取り上げていただきました。

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