高弾性・高強度ガラスファイバー「MAGNAVI®」を新開発
開発背景
近年の脱炭素の流れを受け、エネルギー消費量の軽減に向けた軽量化、薄型化ニーズの高まりにより、FRP・FRTPなどの複合材料を金属の代替として産業製品部材に採用するケースが増えています。複合素材の機械特性※3を高める代表的な補強材としては、カーボンファイバーがありますが、電波透過性やコスト面、黒い色調といった点が一部の用途に適さないという課題がありました。また、同様に補強材として利用されてきたガラスファイバーは、電波透過性などの点で優位性はあるものの、強度や剛性の面でカーボンファイバーに劣ることから、使用用途の拡大が進むFRP・FRTPの分野で、これらに代わる新たな補強材の開発が求められてきました。
製品特徴
「MAGNAVI®」は、ガラス本来の特性とカーボンファイバーに優る耐衝撃性能を有しながらも、カーボンファイバーよりも低価格で、ニュートラルな色調のため、従来のカーボンファイバーでは対応が難しかったエレクトロニクスの分野や再生エネルギー関連分野をはじめとする多方面での用途展開が可能となります。また、ガラスファイバーは、生産時に希土類元素(レアアース)を使用し、その弾性を高めることがありますが、「MAGNAVI®」は、レアアースを一切使わないことで、環境負荷の低減し、また原料調達リスクの回避を実現しています。さらに「MAGNAVI®」は、生産時のエネルギー使用・CO2排出量の削減も行うことで、環境配慮型製品として、脱炭素社会の実現にも貢献します。製品の詳細は参考情報(PDF)をご覧ください。
MAGNAVI®の製品特性
Eガラス(従来のFRP・FRTP用ガラスファイバー)との性能比較
MAGNAVI®は汎用のEガラスに比べて優れた引張弾性率、引張強度を示します。
また、同様に複合材料の補強材として使用されるカーボンファイバーやアラミド繊維と比較して極めて高い耐熱性を持ちます。
Eガラスとカーボンファイバーを添加した場合との複合部材物性比較
複合部材にそれぞれの補強材を添加したところ、MAGNAVI®は強度や耐衝撃性を高め、部材の機械性能を飛躍的に向上させました。
※(いずれもPA66に20%添加した場合。Eガラス成型品物性を100として、表示。なお、本データは保証値ではございません)
MAGNAVI®の製品特性を活かした用途例
- 低誘電率※8・電波透過性x高強度
ガラスファイバー特有の電気絶縁性と、従来のガラスファイバーから改善した高い機械特性により、エレクトロニクスの分野を始めとし、絶縁性と高強度が求められる様々な用途に使用可能です。[使用例] レドーム / 電子機器向けUD部材 / 電力機器向けの軽量・高強度・絶縁素 / 中~大型ドローン分野でのGFRP筐体(Central Plateを含む)
- 高弾性・高強度・耐衝撃xニュートラル色x低価格
カーボンファイバーに対して弾性率は若干劣るものの、カーボンファイバーを凌ぐ高い衝撃性と色の選択性、そして比較的安価であることから、カーボンファイバーの代替として、より汎用的な用途に使用いただけます。[使用例] エアボンベ / 高圧ガス容器 / FCV向け水素タンク / 航空機内装材:床材、貨物室壁材
- 高強度・高弾性x電気絶縁性x耐食性
高圧送電分野の碍子(ガイシ)は、磁器製から樹脂製のものに置き換わりつつあります。これらの用途は軽量・高強度・絶縁性の要求が高く、カーボンファイバーは使用できず、かつ酸性雰囲気での脆性破壊しない耐酸性が要求されます。これらの用途にもMAGNAVI®は好適です。[使用例] ポリマー碍子 / GFRPワイヤ・コンポーズ
用語説明
※1 補強材:部材の強度、剛性などを高めるために付加・付与する材料のこと。
※2 複合素材:2種類以上の異なる素材を組み合わせ、単一の素材よりも強度や耐熱性などを向上させた素材のこと。ガラス繊維強化プラスチック(ガラス繊維などを加えたプラスチック)などが代表例。
※3 機械特性:材料が持つ力学的特性の総称。材料が引張り・圧縮・せん断などの外力に対してどの程度の耐久性を持つかなどの諸性質。
※4 引張弾性:材料に外力を与えた際の変形のしにくさを表す物性値。
※5 引張強度:材料が引っ張られた際の力に対して示す、材料が有する最大強度のこと。
※6 曲げ強度:材料を曲げた際に破壊に至るまでの最大荷重を基に算出した曲げに対する応力のこと。
※7 シャルビー衝撃強さ:シャルピー衝撃試験機を使用し、衝撃を受けた際に材料がどれだけ衝撃力を吸収できるかを数値化したもの。耐衝撃性。
※8 低誘電率:誘電率とは、絶縁性物質が電場を与えられた際の誘電分極のしやすさを表した値。